<顔面神経麻痺>
分類
- 中枢性顔面神経麻痺(核上性) 10%
脳の顔面神経核より中枢側での障害。脳出血、脳腫瘍などが原因となる。
症状としては、顔面下3/2の麻痺のみで、額に皺が寄せられる - 抹消性顔面神経麻痺(核性、核下性) 90%
顔面神経核部およびそれより末梢での障害による。顔面神経管内、茎乳突孔での障害が多い。 - 一般的症状
- 麻痺性兎眼(Bell症状):健側の眼裂は閉鎖できるが、患側では閉鎖できず、眼球が上を向き、白い強膜が見える現象。
- 鼻唇溝消失
- 口笛不能
- 眼瞼と口角下垂
- 前額部の皺消失
- 味覚異常
- 分類
- 特発性末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺) 80%
最も多い。原因は不明だが、寒冷刺激などに続発することが多く、循環障害、自己免疫低下などの説がある。 - Ramsay-Hunt症候群 10%
VZVによる膝神経節への感染で起きる。 - 抹消性顔面神経麻痺の一般的症状
- 疱疹:外耳道、耳珠、口蓋帆にできる
- 内耳症状:耳鳴り、めまい、外耳道や耳深部の疼痛
- その他外傷によるもの
- 頭蓋内麻痺:聴神経腫瘍、脳炎、くも膜炎などによる
- 側頭骨内麻痺:中耳炎、中耳手術による神経損傷、側頭骨骨折
障害部位と症状
分岐
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場所
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働き
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1
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顔面神経核
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頭蓋内~内耳孔
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ー
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2
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内耳神経の分岐
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内耳道底
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聴覚、平衡感覚
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3
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大錐体神経の分岐
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膝神経節
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涙腺、口蓋腺、鼻腺の副交感神経
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4
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アブミ骨筋神経の分岐
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顔面神経管
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アブミ骨筋神経は音量の調節に寄与するため、聴覚過敏や耳鳴りが生じる
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5
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鼓索神経の分岐
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顔面神経管
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舌前3/2の味覚、顎下腺と舌下腺の副交感神経
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6
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運動枝の露出
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茎乳突孔~頭蓋外
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表情筋の運動、顔面の汗分泌
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治療法
- 基本セットはこの4つ
- 星状神経節ブロック
- ビタミンB12製剤
- ATP製剤
- そこに、以下を追加する
- Bell麻痺:温罨法、マッサージ、(ただし、時に抗ウイルス薬)
- Hunt症候群:
- VZVに効くアシクロビル、ビダラビン。あと、γグロブリン
- そして、二次感染防止のための抗菌薬と消炎鎮痛剤
- 副腎皮質ステロイド
- 中枢性の治療の場合、圧迫している部位の浮腫を抑えるために副腎皮質ステロイド
顔面神経麻痺の中枢と抹消の見分け方は?
運動性神経の特徴として、顔面の下3/2は対側の大脳皮質の支配を受け、上1/3は両側の大脳皮質の支配を受ける。よって、顔面上1/3に麻痺が生じておらず下2/3に限局していれば中枢性である。顔面神経麻痺を生じるその他の症候群は?
- Frey症候群:耳下腺領域の手術後に唾液腺分泌神経が汗腺分泌神経と吻合した結果、食事時に発汗が見られる。
- Melkersson-Rosenthal症候群:再発性顔面神経麻痺、肉芽腫性口唇炎と顔面の血管神経性浮腫、溝状舌を3徴候とする症候群。家族性で、小児期や思春期に発症。原因は不明。
<三叉神経麻痺>
三叉神経支配領域の知覚運動麻痺。治療法は顔面神経麻痺と同じ。- 第1枝:前額部の知覚麻痺、毛髪の脱落、脱色
- 第2枝:上顎部の皮膚粘膜歯髄の知覚麻痺
- 第3枝:下顎オトガイ部の皮膚粘膜歯髄の知覚麻痺、舌前2/3の味覚知覚麻痺。下歯槽神経麻痺など
- 交感神経節に局所麻酔薬を打ち込むことで、副交感神経優位になり、局所の循環が高まる。
- 内蔵痛、麻痺に効く。
- ホルネル徴候(眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹)が見られる。
<三叉神経痛>
症状- 40歳以降に多い
- 第2,3枝領域に多い
- 多くは片側性である。
- 数秒~数分持続する発作性かつ間歇性の電撃様疼痛
- 発作時に痙攣を伴うことがある。
- 洗面、食事、会話などの日中活動により誘発する。睡眠時、入浴時は発症しない。
- 不応期の存在
- トリガーゾーンの存在
- バレー(Valleix)の圧痛点:3つ(眼窩上孔、眼窩下孔、オトガイ孔)
- パトリック(Patrick)の発痛帯:4つ(眉毛上、目尻、キューピッド丘、オトガイ孔)
- 疼痛以外に知覚麻痺とか、運動麻痺は生じない。
治療法
- 薬物療法:カルバマゼピン(テグレトール®)、フェニトイン、ジフェニルヒダントイン
- 神経ブロック:眼窩下孔、オトガイ孔、卵円孔に80%エタノール。
- 神経捻除術(=凍結療法)
- 神経血管減圧術